海恋
「…貝橋。
オレ自身は、別に、どうなったって良いんだよ。
それより、オレはコイツが許せない。
貝橋に最悪な事した、コイツが許せねぇんだ。
だから、ごめん。
…男にはな、譲れない物ってのがあるんだよ」
陸くんはそう言って微笑むと、また恐ろしい形相をして、裕くんを睨み付けた。
「やめてっ!」
あたしが陸くんを止めようとした、その時だった。
「裕、何してんぬ?」
お気楽な声が背後から聞こえ、陸くんの腕がピタリと止まった。
よ、良かった...。
それに、この声は…
「…リコ」
「あいっ、咲良、まだ帰ってなかったぬ…………って、田中くん、裕、何しとるば!?」