海恋
七海は可笑しそうに笑うと、指でそっと、あたしの涙を拭き取ってくれた。
「あいっ、咲良…」
七海は閃いたように、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。
ズボンのポケットから、ある物が顔を出した。
「七海、それ…」
「おばあに、入学祝いで、買って貰ったぬさ」
七海がポケットから取り出し、その手に握られていたのは、まだ買ったばかりの、新品のスマホだった。
「連絡先、交換しないかね」
「…うん!」
あたしは早速スマホを取り出すと、七海と連絡先を交換した。
「七海、ありがとね」
「どういたしまして」
七海がフワッと笑ったから、あたしも笑い返した。