海恋


七海は可笑しそうに笑うと、指でそっと、あたしの涙を拭き取ってくれた。



「あいっ、咲良…」



七海は閃いたように、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。



ズボンのポケットから、ある物が顔を出した。



「七海、それ…」



「おばあに、入学祝いで、買って貰ったぬさ」



七海がポケットから取り出し、その手に握られていたのは、まだ買ったばかりの、新品のスマホだった。



「連絡先、交換しないかね」



「…うん!」



あたしは早速スマホを取り出すと、七海と連絡先を交換した。



「七海、ありがとね」



「どういたしまして」



七海がフワッと笑ったから、あたしも笑い返した。

















< 287 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop