海恋
「天国…?」
もしかしたら、七海は前にも、大切な人を失った事があるのかもしれない。
あたしも、大好きだった、優しかったお父さんを亡くした。
お父さん。
今、ちゃんとこの海の先にいる…?
“ティン国”で、見守ってくれてる…?
「咲良、前にスーを亡くしたって、言ってたが。
俺も実は、咲良とおんなじような傷を抱えてるんだが」
「…えっ?」
おんなじ傷を抱えてる…?
七海の過去に、一体何があったんだろうか…?
「俺ぬ話。
長いが、聞いてくれるかね」
「うん…」
寂しげに海の向こうを見つめていた七海は、あたしをしっかりと瞳に射止めて、淡々と話し始めた。