海恋
「忘れ物はないかね」
お婆ちゃんに言われ、コクリと頷く。
「咲良」
七海に呼ばれ、「何?」と返事すると
「…行ってらっしゃい」
七海はそう言うと、優しく微笑んだ。
その表情は、笑ってるけど、どこか悲しげで、複雑な表情だった。
「…行って来ます!」
あたしも、微笑み返した。
「咲良ぁ…。
ちばりーよぉ……」
お婆ちゃんが、微かに涙を浮かべてた。
「やだ… お婆ちゃん、泣かないでよ」
あたしは無理矢理笑った。
あたしも、泣きそうだった。
「じゃあ…
お婆ちゃん、七海、改めて、行って来ます!」
そう言い、2人に見守られながら、玄関を出た。