君の居た世界
‥あたしの世界を変える‥‥。
 
 
「そんなの‥ただの綺麗事。」
 
あたしは冷たい声で呟いた。
 
 
「そうか‥?
でも無理じゃないだろ。
 
変えようと思えば、誰だって出来るさ。」
 
 
‥‥誰だって出来る‥?
 
あなた、馬鹿じゃないの?
 
 
あたしみたいに弱い人間にはそんなこと無理。
 
出来るはずが無いのよ。
 
 
 
あたしは、そう言ってやろうと思った。
 
 
けれど‥
言わなかった。
 
 
ううん、違う‥‥。
 
あたしは言わなかったんじゃない。
 
 
 
『言えなかった』
 
 
どうしてかくらい、あたしにだってわかった。
 
 
 
この人が言っていることは、本当だから。
 
ただ、そのことをあたしは信じたくないだけだっ‥て。
 
 
分かってる。
 
 
 
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