君の居た世界
氷夜が見つめていたのは、あたしが持っている買い物袋だった。
 
 
「‥‥‥?これがどうかしたの?」
 
 
いまいち氷夜の、言いたいことが理解できなかった。
 
 
 
スッ‥
 
 
氷夜があたしの目の前に手を差し出した。
 
 
「‥何?」
 
 
‥この手はどういう意味だろう。
 
お手?
いや、あたし犬じゃないし。
 
 
 
「だーかーら!
その買い物袋は、俺が持ってやるってことだ!」
 
 
氷夜が恥ずかしそうに目をそらした。
 
 
‥‥あ、そういうことだったのか。
 
 
「分かりにくいなー。
それならそうと、はっきり言ってよね。」
 
 
あたしはそんなことを言いながら、氷夜に買い物袋を差し出す。
 
 
 
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