君の居た世界
「‥?何がだよ。」
 
 
氷夜もあたしと同じく、流雨の言葉の意味が理解出来なかったらしい。
 
 
「‥はぁ。だから、あんたより先に龍が彼女できちゃうわよ。」
 
 
‥そういう意味か。
 
あたしは一人で頷き、納得した。
 
 
「‥‥‥。」
 
 
流雨の一言で、氷夜は黙りこんでしまった。
 
 
「ま‥まぁ、そういうことは良いじゃない。」
 
 
あたしはなんとかして、微妙な空気を振り払おうとした。
 
 
 
「そうね、二人が幸せなら私は良いわ。」
 
流雨はふぅっと、軽く息を吐きながら言う。
 
 
 
‥‥彼氏‥か。
 
 
そう心で呟くと、不意にあたしの頭には、一人の男(ひと)の姿が浮かんだ。
 
 
 
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