溺れ愛
「あの、ここ私の家じゃない・・・」
連れてこられたのは良平くんのお家だった。
家につくなりお風呂場につれてこられて、制服のまま湯船に浸かってるです・・・。
良平くんに抱っこされたまま・・・。
「ねぇ、ちぃ。俺のこと嫌いになったの?」
「嫌いじゃないよ・・・」
その、逆だもん。
「じゃあ、相馬のことが好きなの?」
「え?」
「答えて」
「良い人だとは・・・思うです」
なんで相馬くん?
今日であったばかりなのに。
「ふーん。ねぇ、なんで俺から逃げるの?」
「・・・・・・」
「言えないようなこと?」
本当の理由を言ってしまったら。
これからそばにいられなくなってしまう・・・。
「泣きたいのは俺の方だよ」
好きなの。
好きなの。
大好きなの。
理由はそれだけなんだよ・・・良平くん。
たったそれだけが言えなくて、言葉が涙となって私の頬をすべっていく。
「ちぃが俺を避けるから、俺の心臓が破裂しそうだった」
「え?」
「ちぃ、お願いだから避けないでよ。俺の傍にはちぃがいないとダメなんだから」
そばにいたいと思っていたのは、
そばにいて欲しいと願っていたのは、
いつだって私の方だけだと思っていたのに。
良平くんも、そう思ってくれていたの?
「ごめんなさい・・・!ごめんなさい。良平くんの傍にいるよ・・・」
横抱きの体勢を崩して、良平くんに抱き着く。
「もう、避けない?」
「うん」
「もう、逃げない?」
「うん」
「じゃあ、怒るのはやめるよ」
耳元で聞こえてきた良平くんの声が少し柔らかくなって、背中に良平くんの腕が回ってきた。
抱き着いたはずなのに、いつの間にか前から抱っこされてるような感じになっちゃてる。
今はまだ、これでいい。
良平くんが、
そばにいなくちゃダメって言ってくれたから。
その言葉で、私はまた頑張ろうって思えるから。
良平くんが他の女の子といたらきっとモヤモヤするけど。
イヤな気持ちになっちゃうけど。
だけど、私は良平くんのそばにいる。