溺れ愛


電車に乗ったら丁度席が二つ空いていて、私と弥生ちゃんを座らせてくれた。


私の目の前には良平くんが立っていて、その右側に相馬くんで左側には結城くん。


弥生ちゃんはすでにスヤスヤと眠りについてて、結城くんは立ちながら眠ってる?


器用だね!


相馬くんはイヤホンをつけて音楽を聴いてるみたい。


良平くんは・・・



「ん?」



何してるのかなぁって見上げたらバッチリ目が合っちゃった。



「なんでもないです!」

「そう?さっきからキョロキョロしてるね」



くすくす笑う良平くん。


みんなのことを見てるところを見られてたみたい。


なんだか無意識の行動を見られていたから恥ずかしい・・・。


気恥ずかしさに目をそらせば



「無差別殺人・・・」



電車の中で流れているニュースに目がいった。



「ちぃ?」

「この近くで無差別殺人があったんだって・・・犯人は逃走中みたい」



こんなニュースを見ると、やっぱりどうしてだって胸が痛むよ。


いきなり大切な人を奪われてしまったらと思うと怖い。


もしも家族を失ってしまったら?


良平くんを失ってしまったら?


弥生ちゃんを失ってしまったら?


そんな風に考えてしまう。


人を傷つけることは絶対にしちゃいけないこと。


ましてや無差別なんて・・・。



「ちぃは優しいね」

「え?」

「いっつもそんなニュースをみて、心を痛めてるでしょ?今も表情が辛そうだった。他人事だと目を反らすのは簡単だけど、ちぃみたいにいろんな人の立場にたって痛みを理解しようとする人たちが増えればいいのにね?」



良平くんが頭をポンポンしてくれて、私の気持ちをそっとすくってくれた。


私も思うんだよ?


良平くんみたいに優しい人がたくさんになれば、もっともっと平和な世の中になっていくんじゃないのかなぁって。





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