溺れ愛





家について、ベッドの上に丸まって座ったけど・・・。


どうして?


未だに体が震えるんだろう。


さっきあれほど良平くんが抱きしめてくれて落ち着いたはずなのに。


胸がずっとざわざわしていて、不安がずっと取り除けないような感覚で。


血の、噎せ返るような匂いがずっと付きまとう。


自分で自分を抱きしめるように体をさするけど、息が苦しい。



「ごめんなさい、ごめんなさい・・・ごめんなさい」



何度も繰り返されるシーン。


刃物を振りかぶる男の人。


私を庇う、武くん。


武くん肌を突き破る音・・・。




「はぁっ・・・・はぁっはぁっ・・・」



苦しい・・・・息がっ・・・。


おかしいな・・・。


良平くんがそばにいてくれた時は、ここまで苦しくならなかった。


こんなに震えることもなかった。


私が苦しんでる場合じゃないのに。


痛い思いも、苦しい思いも・・・武くんが全てを引き受けているのに。


私が苦しむなんて、おかしいです・・。



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