溺れ愛
ガチャッ
部屋の扉が開く音が耳に届く。
スッと近寄って来る影。
「大丈夫だよ、ちぃ。怖いことはもうないよ・・・」
ふわりと抱きしめてくれるのは紛れもなく良平くんで。
「ちぃは来るなって言ったけど、やっぱり俺には放っておくなんて無理だよ。せめて今日だけは傍にいさせて?」
帰り道、良平くんは私の傍にいると言ってくれたけど・・。
武くんのことを思うと良平くんのそばにどうしてもいれなくて。
私だけが誰かに頼って楽になるなんて・・・出来ないです。
「ちぃが・・・何を考えているのかは何となく分かっているつもりだけど」
ぎゅうっと抱きしめてくれる力が強くなる。
良平くんも、悩んでるんだ・・。
私の気持ちを汲もうとしてくれて・・・悩んでるんだよね?
ごめんなさい。
本当に、ごめんなさい。
「今日は・・・ぎゅってして・・・」
「ん」
良平くんに抱きしめられたら息が苦しくなくなってきたです。
「ちぃ」
頭を撫でながら私の名前を呼ぶ良平くん。
何回も、何回も。
そうしてくれる。
いつだったかな、昔にもこんなことがあったような気がするです。