思春期シュガースター
どうして、だろう。
君はどうしてこんなに頑張れるんだろうね。
あんな風に笑ってくれても、僕の言葉だけじゃ君を納得させられない。
やっぱり響かないのだろうか。
もっと前を、もっと上を見つめていて、僕は視界に入らない……?
確かに僕は彼女のそういうところに憧れているのに。
なのに、苦しくなった。
「だってあたし、スターになりたい!
きらきら光るお星さまみたいに!」
「え……?」
「もっと演技がうまくなりたい。
まだあたしは中学生だけど、これからうんと上手になって、演劇で生きていきたい!」
そう言いながら、彼女の瞳は真剣。
叩きつけたはずの台本を拾い上げて、そっと表紙を撫でる。
「あたしは今のあたしで満足しない。
色んなことを諦めるには早いから。
頑張るって決めたんだ!」
ああ、やはり金原さんは金原さんだ。
子どもみたいなのに真剣に可能性を信じているから、いつだって目が眩しくて、手が届かない。
だけどそれさえも悔しいくらい、好きなんだ。
「……頑張れ」
ぽつりと呟いた言葉に、金原さんが僕を見つめる。
あの吸いこまれそう瞳で。
「頑張れ」
もう1度繰り返した言葉に、彼女は珍しく、柔らかく微笑んだ。