思春期シュガースター




手をぱんっと合わせて、いい音。

頭を下げた彼女の旋毛(つむじ)がよく見える。



「でも今日だけだから!
巻きこまないから、あたしが行くのは見逃してー! お願い!」



必死な様子の金原さん。

最近、こんな彼女の表情を目にすることが多い。

そのことが少しおかしくて、……優越感を感じる。



僕を頼ってよ、もっと。

それだけで、僕はなんだって頑張れるから。

勇気を出せるから。



「これって、ふたりだけの秘密……?」

「え?……あ、 うん、そうだよ!」

「じゃあ、いいよ」



大きな目を丸くした金原さんにくすりと笑う。

ああもう、そんな顔も素敵だなんてずるいよ。



「金原さんとなら、一緒に行くよ」



意気地なしの僕だけど、君がいるところへなら駆け出すことができるから。

いけない校則破りだって、罪悪感がひりひりと痛むものから特別で甘いものへと早変わりする。



「藤田が不良への1歩を……」とかなんとか言いながらも、嬉しそうに笑った。






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