思春期シュガースター
君はねぇ! と僕に呼びかける。
「あたしのこと、『金原さん』なんて他人行儀に呼ぶのやめてさ、『千菜』って呼んでよ!」
にっこりと、まさかの発言。
「あたしのこと苗字で呼んでくる人なんて、他にいないから変な感じなんだよねー。
あたしも藤田のこと、『悠』って呼ぶからさ」
「なんで、そんな急に」
あまりにも突然。
呼び方に違和感があったとしても、どうして今なんだろう。
「だってあたしたち、もうただのクラスメートなんかじゃないから!」
秘密の共有者。
舞台の協力者。
なんだっていい。
僕たちの関係に名前をつけて。
君は意図せず僕を捕らえていく。
でも、それでいいよ。
それが、いいよ。
「千菜……さん」
でもやっぱり無理だ!
呼び捨てなんてできない!
あははと弾けたように笑う彼女の隣で、羞恥から唇を尖らせる。
僕にはハードルが高すぎたんだから仕方がない。
このどこか遠い気もするけど、以前よりずっと近いこの距離感で十分だ。