思春期シュガースター
逃げないでオーディション
僕が千菜さんに想いを告げて、その場を立ち去ってからもう1週間が過ぎた。
その間の放課後の練習に行かなくなったのなもちろん、1言たりとも話さず目も合わず。
あっという間に今日は演劇部のオーディションの日だ。
僕は、関係者以外立ち入り禁止となる体育館の前で立ち尽くしていた。
途中で千菜さんの演技の手伝いを放棄した僕。
恋を知った彼女に、僕はもう必要ないとわかっているけど、それでも責任持って今日まで続けるべきだったのに。
僕は傷つきたくなくて、逃げ出した。
なのに結局気がかりで、ここまで来てしまった。
ふっとその扉の前から後ずさって、体育館の裏。
細い階段を上る。
誰かとつるむことがなければ、目立った問題も起こさない僕だったけど、もうそのままじゃいられない。
真面目をやめて、大人しくなんてしないで、みんな1歩踏み出さなくてはいけない時がある。
僕にとってそれは、今だ。