思春期シュガースター
あの日の僕は、彼女を突き放すように自分の想いを口にした。
どうして気づいてくれないんだと、身勝手なことだけど嘆くかのごとく。
だけど本当は違うんだ。
恋を知った彼女は今までよりもずっと眩しい。
僕が妬んでしまうほど輝いている。
その姿へと導いたのが僕だと言うのなら、きっとこれ以上のことなんてない。
だからどうか今日は、今日だけは、慈しむようにそっと口にしたい。
「好きです。
千菜さんのことが、とても」
びくり、と僕の腕の中で千菜さんが肩を揺らす。
「君が先輩を好きだとしても、僕はそれでも君を想っているんだ」
自分の言葉に胸がぎゅうと絞られるように苦しくなる。
それでも彼女を離すことができずにいると、
「────は?」
千菜さんのいつもより低い、困惑した声。
べりっと音がしそうな勢いで体を引き剥がされる。
「はぁあああっ⁈」
千菜さんの叫び声が、響く。
さすが演劇部、空気がびりびりと震える。