思春期シュガースター




あの日の僕は、彼女を突き放すように自分の想いを口にした。

どうして気づいてくれないんだと、身勝手なことだけど嘆くかのごとく。



だけど本当は違うんだ。



恋を知った彼女は今までよりもずっと眩しい。

僕が妬んでしまうほど輝いている。



その姿へと導いたのが僕だと言うのなら、きっとこれ以上のことなんてない。



だからどうか今日は、今日だけは、慈しむようにそっと口にしたい。



「好きです。
千菜さんのことが、とても」



びくり、と僕の腕の中で千菜さんが肩を揺らす。



「君が先輩を好きだとしても、僕はそれでも君を想っているんだ」



自分の言葉に胸がぎゅうと絞られるように苦しくなる。



それでも彼女を離すことができずにいると、



「────は?」



千菜さんのいつもより低い、困惑した声。

べりっと音がしそうな勢いで体を引き剥がされる。



「はぁあああっ⁈」



千菜さんの叫び声が、響く。



さすが演劇部、空気がびりびりと震える。






< 38 / 42 >

この作品をシェア

pagetop