思春期シュガースター




「もしかして悠、うちの部の伝説と化しつつある先輩のこと、知らない?」



……一体どういうことだろう。



「あたしたちが入学した年の新入生歓迎会で行われた出し物は男女逆転シンデレラ。
そこで女子よりよっぽど女性らしい演技をした、彼は演劇部のお姉さまと呼ばれていたり」



そういえば、そんなこともあった。



まだ僕がなににおいてもやる気のなかった頃。

入学式のあとに見たシンデレラの完成度は中学生のものとは思えないほどだった。

主に主演の力で。



それは僕さえも唖然とさせた。



背は高いけど、割と華奢な体つき。

美しい動き。

華やかな雰囲気の彼は確か……



「オネエじゃなかったっけ……」



もしかして、千菜さんがずっと言っていた先輩は、その先輩なのか。



「あたしたちはオネエ系男子の先輩の持つ、あの圧倒的演技力と女子力に敬意を表して、姉さん先輩と呼んでいます」



真剣な表情で告げられた真実に、思わず脱力する。



今までの僕の努力は、想いは、なんだったんだろう……。






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