思春期シュガースター
そんな彼女が僕に声をかけてくれただけでなく、「恋を教えて」なんて言ってくるんだ。
動揺するなという方が無理な話だ。
赤い紐リボンと中学生にしてはちょっと短い、膝が見えるくらいのスカートを揺らして。
その時の彼女は走って来たのか、頬は紅潮していた。
そして、僕の目を覗きこんできた。
「藤田? 聞いてる?」
「聞いてる、けど」
喉に詰まっていた声を絞り出す。
こんな風にまともに話すなんて初めてで、声が震えていることがわかって恥ずかしい。
本を拾い上げる風を装って、顔を下に向けた。
「なんで急に恋、とか……」
そう。
問題は、気になるのはそこなんだ。
今までずっと彼女を見てきたけど、恋愛に興味を示したことなんて1度もなかった。
あまりにも突然すぎる発言だ。
だからと言って恋愛に全く関わりがないわけではない。
千菜さんは誰かの恋にはいい意味で絡んだり、一生懸命になれる。