先生、私じゃダメですか?


「あっ! 」
「先生、どうしーー 」


先生が急に大きな声を出し、
私は反射的に後ろを振り返った。


振り向くと、
渋谷は私のすぐ側にいた。


「やっと目が合った」


無邪気に笑う渋谷。

手を伸ばせば届きそうな距離。

私の瞳には、
渋谷しか写っていない。

体がだんだん熱くなる。



「先生、近いです」
「あっ、ごめん。……吉野さん変わったね」
「何ですか、急に」


渋谷は、
私の隣に座った。


ドキドキが止まらない。

心臓の音が聞こえてしまいそうだ。



「……別に、何も変わってないです」
「そっか。俺の気のせいか」


変わったといえば、変わったと思う。


あの日を境に。

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