先生、私じゃダメですか?


私は立ち上がり、
カバンを持って教室を出た。



早く渋谷に会いたい、話したい。


気持ちが高まって
少し駆け足になった。


ーードンッ


その時、
誰かにぶつかった。


「痛った……つーか誰だーー 」


彼は腰に手を当てている。




黒髪に切れ長の瞳。

整った顔立ちの彼。



この人……

どこかで会った気がする。


「お、お前…… 」
「あっ、すみません」


私は立ち上がり軽く会釈をし
職員室の方へ走って行った。



あの人、知ってる。




でも名前は思い出せない。



どこで会って、
あの人と何をしたかも分からない。


まあ、人違いかもしれないし。


そこまで気にする必要はないよね。



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