先生、私じゃダメですか?
「失礼します」
私は職員室のドアを開け、
渋谷先生の机に向かう。
少し早歩きで。
「渋谷先生」
「あっ、吉野さん」
渋谷は、
手で口を覆い小さなあくびをした。
「まったく、遅いよ。ずっと待ってたんだから。HR終わったらすぐ来るもんでしょ? 」
「ご、ごめんなさい」
……怒ってる?
確かに少し遅れたけど、
ていうか時間決めてなかったじゃん。
遅れるもなにも、ないじゃん。
「でも、時間決めてなかったしね。まあ、おあいこって感じかな」
渋谷はくしゃっと笑う。
さっきまでイライラしていたけど、
渋谷の笑顔を見たら
そんな気持ちはどこかへ飛んで行った。
「じゃあ、数学の補習をやりますか」
渋谷は
机にある教科書やノートを持って立ち上がる。
「吉野さん、行くよー? 」
私は慌てて渋谷のもとへ、
走って行った。