先生、私じゃダメですか?
「吉野さん、ありがとう」
渋谷の笑顔に胸がキュンとした。
「あの……、私もやります!」
大きな声で言い、
席を立ち上がった。
声を出したのは、
佐伯真美(さえき まみ)。
この子だけは良く覚えている。
いつもなら、
クラスの人とかは
名前と顔は一致しないのがほとんど。
けど、佐伯さんは違った。
なぜかというと……
「佐伯さんもありがとうね。じゃあ、二人にお願いします」
渋谷がそう言ったとき、
佐伯さんはチラッと私を見た。
何かを言いたそうな目。
そう……
これが理由で、
私は佐伯さんを良く覚えていた。
「はぁ…… 」
私は小さなため息をついた。
たまに休み時間とか、
昼休みとか帰るときとかに
佐伯さんから視線が感じる。
別に何かしたわけではない。
正直、
一緒に係りをやっていけるか不安。