先生、私じゃダメですか?


蝉の鳴き声

ジリジリと照らす太陽の光

モワッとした空気

木の隙間から見える青空


私にとって裏庭は、
秘密基地的なものかもしれない。


「吉野さん? 」
「へっ…… 」


前を見ると、
そこにはベンチに座った渋谷がいた。


Tシャツに半ズボンといったラフな格好をしていた。


「夏休みなのに学校? 吉野さんって部活やってたっけ」
「やってないです。先生こそ、何やってるんですか? 」


”休憩”と渋谷は言って、空を見上げた。


ただボーッとしている渋谷。


ただそれだけなのに、
私は渋谷から目を離せなかった。


何となくだけど

今の渋谷を見ていたいと思った。



ふいに吹く、
そよ風が心地よくて

まるで
世界に私と渋谷しかいないようで……


「俺にとってここは、秘密基地みたいなもんなんだ」


あっ……


同じこと考えてた。


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