先生、私じゃダメですか?
私と渋谷は教室に行き、
窓側の席に座りお互い向き合う形となった。
二人っきりの空間と時間。
「この問題は、この公式を使って解くんだ」
渋谷の教え方は上手で、
馬鹿な私でもしっかりと理解できた。
「大丈夫? 分かったかな、吉野さん」
「大丈夫です。理解できました」
「そっか。よかった」
渋谷は歯を見せながら笑った。
「ねえ、渋谷」
「俺は先生なんだけど? 」
「あの日のこと覚えてる? 私の家に来た時のことを」
私はそのまま話し続けた。
「覚えてるよ。また、何かあった? 」
「何でもない。私、ジュース買ってーー 」
「吉野さん! 」
私が立ち上がり教室から出ようとした瞬間、渋谷は私の腕を引っ張った。
渋谷は私の瞳を真っ直ぐ見つめている。