先生、私じゃダメですか?
「何かあったなら言ってくれ。俺は……俺は吉野さんが心配なんだ」
渋谷はそう言って、私を抱きしめた。
渋谷の熱に身体が溶けてしまいそうなほどに強く抱きしめた。
「大丈夫だから。ただ気になっただけだよ」
違う。
本当はどうにかして欲しかった。
私は相変わらずあの家が大嫌いで、
けどやっぱり大嫌いな母親と父親に愛されたくて……
家族からの愛が欲しかった。
「喉が渇いたんで、ジュース買って来ます」
私は渋谷から離れ、
少し早足で教室を出た。