優歌-gental song-
…優歌さん。
こんなことを言えば、きみは大袈裟だと笑うかもしれないけれど。
きみの笑顔が。
きみの歌声が。
ぼくを照らした。
ぼくの光、だったんだ。
それを守るためなら、ぼくは。
ぼくは。
ぼくにできることなら、何だってするよ。
「きれいな歌だね」
慌てて振り返ると、優歌さんが立っていた。
「どうして、ここに」
「私も知ってたの。屋上に繋がる扉の鍵が壊れてること」
優歌さんは焦りまくるぼくにクスッと笑うと、フェンスに寄りかかった。
「私ね、屋上から見る夕日が好きなんだ」
彼女のまっすぐな瞳が夕日に染まる。
その美しい瞳から、目が離せなかった。
つまるところ、ぼくは見惚れていた。
「千尋くんの歌、やっぱり落ち着くね」
彼女はニコニコとかわいい笑顔で、そんなことをいう。
「落ち着く?」
「うん。落ち着く。聞いているとね、なんだか心が静まるの」
「落ち着くなんて、初めて言われた」
そうなんだ、と彼女は笑った。
「落ち着くし、なんだか元気ももらえるよ」
「どれだけ効能があるのさ」とぼくは笑った。
「本当だよ」と優歌さんはムッと眉をひそめた。
「千尋君の歌を聞いてると、本当に元気になるの。心が、元気になるの」
勇気も湧くよ、と優歌さんは言った。
「勇気…?」