優歌-gental song-
光-hope-
*
歌は好きだった。
『上手に歌えたね!』
そういって誉めてくれるのが、嬉しくて、嬉しくて。
その時の微笑みとか暖かい雰囲気だとか、今も忘れられない、心地良い思い出だ。
けれど暖かい優しいものほど、繊細で壊れやすくて。
ガシャンと音を立てて、いとも簡単に砕け散る。
両手で掬った砂のように、サラサラとこぼれ落ちる。
幸せは、あまりにも儚い。
*
キーンコーン__
放課後になるとざわざわとざわめきだす教室。
今日もいつもと同じ1日が終わりを告げた。
帰る支度をしていると、クラスメイトの1人がぼくを呼んだ。
「なぁ、千尋」
彼の名前は夏樹という。
快活で、明るくて、運動神経抜群で。
ぼくとは違う人種の人間だ。
「なに?」
そんな彼に名を呼ばれたことに驚きつつも返答した。
「お前、今日暇?よかったら一緒にカラオケ行かねぇ?」
ぼくは少しだけ間をおいて、「ありがたいけど、遠慮するよ」と言って立ち上がった。
「今日は用事があるんだ」
ごめんね、と夏樹君に謝ると、ぼくはそのまま教室を後にした。
教室の扉を閉めた後、立ち止まってため息を吐いた。
…カラオケなんて、冗談じゃない。
もう、人前で歌を歌うのは、やめたんだ。
1つため息をこぼすと家に向かって歩き出した。
歌は好きだった。
『上手に歌えたね!』
そういって誉めてくれるのが、嬉しくて、嬉しくて。
その時の微笑みとか暖かい雰囲気だとか、今も忘れられない、心地良い思い出だ。
けれど暖かい優しいものほど、繊細で壊れやすくて。
ガシャンと音を立てて、いとも簡単に砕け散る。
両手で掬った砂のように、サラサラとこぼれ落ちる。
幸せは、あまりにも儚い。
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キーンコーン__
放課後になるとざわざわとざわめきだす教室。
今日もいつもと同じ1日が終わりを告げた。
帰る支度をしていると、クラスメイトの1人がぼくを呼んだ。
「なぁ、千尋」
彼の名前は夏樹という。
快活で、明るくて、運動神経抜群で。
ぼくとは違う人種の人間だ。
「なに?」
そんな彼に名を呼ばれたことに驚きつつも返答した。
「お前、今日暇?よかったら一緒にカラオケ行かねぇ?」
ぼくは少しだけ間をおいて、「ありがたいけど、遠慮するよ」と言って立ち上がった。
「今日は用事があるんだ」
ごめんね、と夏樹君に謝ると、ぼくはそのまま教室を後にした。
教室の扉を閉めた後、立ち止まってため息を吐いた。
…カラオケなんて、冗談じゃない。
もう、人前で歌を歌うのは、やめたんだ。
1つため息をこぼすと家に向かって歩き出した。