優歌-gental song-
彼女はその子を抱えたまま、ベンチへ移動した。
となりにぼくが座ると、彼女は言った。
「あなた、最低」
睨みつけるような視線で、そう言った。
ただ腕の中にいる女の子を起こしてはいけないと、少し小声だった。
「え?」
先ほどの笑顔はどこにいったんだ、と思うほど、彼女は怒りをあらわにしていた。
「こんな小さな女の子を泣かせるなんて最低だと言ってるの!
女の子を泣かせたなんて、許されることではないわ!」
「え、え?」
「警察に訴えるわよ。覚悟しなさい!」
女の子を抱えながらも、かばんからケータイを取り出そうとする彼女に、「ご、誤解だ!」とぼくは訂正した。
*
「なんだ、そうだったんだ」
いきさつを説明し終わると、彼女はまたふわりと微笑んだ。
「ごめんなさい、勘違いしてしまって」
「いや、いいんだ。その子も泣き止んでくれたし」
優しいんだね、と彼女は微笑んだ。
「きみの方が優しいよ」とぼくは言った。
「きみの歌、すごく優しかった」
彼女は照れたように笑った。
「歌うの、好きなんだ」
あんまりうまくはないけど、と付け加えた。
「上手だったよ」
ぼくは言った。
となりにぼくが座ると、彼女は言った。
「あなた、最低」
睨みつけるような視線で、そう言った。
ただ腕の中にいる女の子を起こしてはいけないと、少し小声だった。
「え?」
先ほどの笑顔はどこにいったんだ、と思うほど、彼女は怒りをあらわにしていた。
「こんな小さな女の子を泣かせるなんて最低だと言ってるの!
女の子を泣かせたなんて、許されることではないわ!」
「え、え?」
「警察に訴えるわよ。覚悟しなさい!」
女の子を抱えながらも、かばんからケータイを取り出そうとする彼女に、「ご、誤解だ!」とぼくは訂正した。
*
「なんだ、そうだったんだ」
いきさつを説明し終わると、彼女はまたふわりと微笑んだ。
「ごめんなさい、勘違いしてしまって」
「いや、いいんだ。その子も泣き止んでくれたし」
優しいんだね、と彼女は微笑んだ。
「きみの方が優しいよ」とぼくは言った。
「きみの歌、すごく優しかった」
彼女は照れたように笑った。
「歌うの、好きなんだ」
あんまりうまくはないけど、と付け加えた。
「上手だったよ」
ぼくは言った。