王子サマは料理人―コブタちゃんと双子さん―
事件ときっかけ
それは試験が終わって一息をついた頃、5月の中旬。
放課後、教室で課題をやっているといきなり電気が落ちた。
誰かが消したというわけではなさそうだった。向かい側の棟の教室の電気も一斉に消えている。
(……停電?)
部活動時間ということもあり、教室には誰もいなかった。ざわめきも聞こえてこないということは、近くの教室にも人がいないのだろう。
しん、とした世界に心臓がはねる。
真っ暗というわけではないが、読み書きをするには難しい程度。しかし窓からはいる風が冷たく、なんとなく――まるで幽霊でも出そうだと思った。
そう考えて首をふる。まさか!
(この校舎新しいし、まっさかそんな非科学的なこと……)
私は意味もなく立ち上がる。
キョロキョロと周りを見て、異常はないことを確認した。
瞬間、いきなり風がふいた。
「びゃああっ」
我ながら可愛くない奇声。
ああもう嫌だ。帰ろう。そうだ帰ろう。もう帰ろう。
私はノートと筆記用具を簡単に整え、通学鞄を抱えた。
扉の前で、窓を開けっ放しにしていたことに気付いた。けれど、今の私には振り返ることもできない。
私はがらり、と扉を開けた。