月夜に悪魔



「………後は適当にやっといてくれ」



フィートはコクりとうなずき、バランは扉を開いて外に出て行った




「あなたは?」


「ん?」



フィートは優しく返事をした


「フィートだよ、君は前七瀬って呼んでたんだよ」



「どうして二つも名前があるの?」


「ん…知らなくていいよ」


「………?」



フィートはなぜか優しい気持ちになれた



バランとすごした日々を忘れた皐月はすごく清い物に見えた



それは悪い考えだとわかっているけど、なぜかふと思ってしまう


最初は…こんなに清かったんだよな……




前の皐月は汚れてるってわけじゃない


だけど、バランを知ってるから


バランを思ってるから



彼女はただ知らないだけ


自分の想いを、不思議な感情を





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