tear/skill
「悠真」
「起きてるよ」
「いいよ寝てて
なんでもないから」
「どうした?」
「んん、私いかなきゃ」
「本当に?」
ウソばかり···
あなたには見抜けていますか?
「行くな」
「大丈夫だよ」
無理して笑ってみた
「笑ってんじゃねぇよ笑うな」
ナースコールを押そうとした手首を掴まれる
「私いかなきゃ」
「なんで?」
「行かなきゃいけないの」
「行かなきゃいけないなんて思うなよ?
おまえいまなにかから逃げてたろ」
「なんで見抜けるのずるいよ···悠真」
「やっぱりな···
少し寝る···」
再びきれる会話
ノックの音がして私は息をのんだ
顔をだしたのはいつもの看護士さんだ
「どうしたの?
顔色わるいみたいだけど」
「大丈夫です」
「悠真くんもずっとそう言ってたわ
昨日はずっと泣いてたみたい
そしたら飛び降りなんて···ねえ?」
悠真の包帯はまだ血がうっすらと滲んでいて腕にはギプス
首も固定されていた
「っ···あぁ」
悠真の辛そうな呻き
熱もさがりきらず眠ってはいるが苦しそうだ
「少し痛みどめを増やそうかしら
ちょっと先生に相談してくるわね」
点滴が落ちるのをみながら悠真のギプスをなぞる
「っ···」
「痛い?苦しい?ごめんね」
代わってあげられたら
落ちていたのが私ならよかったのに
「陽菜···ここにいたの?」
はっとして後ろを振り返る
「うっうん、璃玖がここに来るなんて珍しいね」
「そう?いま検査の帰りだから」
だから車椅子なんだ
「璃玖」
「なに?もう少ししたら退院みたいだよ」
「そっか」
「そしたらどこ行こうか?」
「海···かな行けなかったし
それより病室戻ろ」
私は車椅子を押してあげて璃玖の病室に行った
「陽菜ムリしてる?」
「してないしてない」
「ならいいけど
さっきなにしてたの?」
ふいに伸ばした手
私は悠真に触れていた
「なんでもない」
璃玖にもついたウソ
「ならいいけど
海いきたいの?こないだ行けなかったしね」
なかなか言えない言葉
言いかけてつまってなかなか言葉がでてこない
「ごめん」
とっさにでたのは謝る言葉だけ
「陽菜、大丈夫だからねっ?」
大丈夫じゃない私の心グチャグチャだ
「うっうん」
「気分転換しておいで」
私は売店で飲み物を買って休憩所の椅子にかけた
いつもならこのタイミングで悠真が来るのに
「Howareyou?」
「はい?」
「だーからHowareyou?」
「えーと」
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