tear/skill
「悠真兄の病室わかる?」
悠真兄?でも確かに似てるかも目元とか
悠真より少し背が高いような気がする
「あっうん」
「びっくりして慌てて飛行機で帰ってきた」
「えーっと」
「影沼燈真」
とうま···つまりは悠真の弟ってこと?!
「えー」
「悠真兄が飛び降りたって聞いたからさ」
「うっうんまあ」
歯切れ悪く話していると私の飲みかけのジュースをくいっと飲み干して私の手をひいて立たせた
「早く行こ」
「わかったから」
ずんずんと歩いていく後ろで私は半ばひきずられていた
私はきになってることを訊いた
「あなたも心が読めるの?」
「はあ?なにそれ」
なにそれって···
「悠真はよめるから」
「よめるわけないじゃん
悠真兄お得意の詐欺話しでしょ」
「詐欺話しって」
「病室どこ?」
「そこを左に曲がったとこ」
「サンキュー」
「ちょっと」
よいしょっと言って私を軽々持ちあげると病室のドアを開けた
「ハロー悠真兄ってなんだよこれ」
ちょっと手と思っていたら案の定、落とされた
「イタタ···」
「あっごめん」
「ごめんじゃないし」
「つーかこれマジ?」
マジじゃなかったらなんなんですかといいかけてやめた
「燈真?」
悠真の声にはっとした
「悠真兄」
「帰ってくんなつったろ」
「でも···悠真兄には俺しかいないから」
「父さんは?」
「相変わらずだよ
悠真兄のこときいても顔色ひとつ変えずに社長職務を全うしてる
母さんは?」
「別に」
「別にって」
「話してない」
「そっか」
「アメリカはどうだ?」
「ん?日本ほどじゃないけどなかなか快適かな
今度ガールフレンド紹介するよ
さっき会ったばかりのこの子は悠真兄の彼女?」
「さあ」
「さあって
ああそうか悠真兄まだ話してないんだよね
俺たちの両親、三年前に離婚して俺は父親とアメリカ暮らし
悠真兄は母親と暮らしてんだよ
でも英語ぜんぜんわかんないんだよね」
「へぇ」
「燈真」
「ん?」
「陽菜わるい外に出てくれないか?」
「うっうん」
私は病室の外で待つことにした
「燈真」
「なんだい改まって?」
「しばらくこっちにいるのか?」
「本当はそうしたいんだけどね、まだやりかけたことがあるからすぐ戻る
なんで?」
「陽菜を守ってほしいんだ俺の代わりに」
「what?!」
「きっと俺は守ってやれない」
「悠真兄、元気になるんだろ
悠真兄」
会話が途切れて慌ててナースコールを押す
慌ただしくなる病室
< 14 / 21 >

この作品をシェア

pagetop