tear/skill
「もういいよ陽菜
気持ちは変わらないんだね
いってらっしゃい
頑張って」
璃玖ごめんね
心の中で何度も謝ってから歩きだした
まだ心がひりつくけど今度は悠真に会いに行かなきゃ
悠真の病室の前
腕を組ながら壁に背を預けてる燈真と目が合う
燈真は優しく私を抱きしめてくれた
「頑張ったんじゃないあんたなりに」
「燈真」
わしゃわしゃと髪を撫でられて私は燈真について行った
待合室の長椅子で私は差し出された飲み物を受け取った
「ありがと」
「別に
俺さ明日にはアメリカに帰らないとまずいんだ」
「えっ···」
「本当は一緒にいてやりたいんだけど
これつけてな」
首にかけられたのは小さな十字架のネックレス
「···」
「願掛けみたいなもんだ」
「ありがと」
「あとこれも」
手に握らせられたのはお守りだった
「燈真」
「まあ頑張りなよ
君みたいなやつに悠真兄とられんのはイヤだけどしかたないっか」
頬に軽めにキスされた
「燈真」
「ん?」
「私···言えるかな」
「大丈夫」
私は燈真に背中を押され悠真の病室のドアをノックしようとしてやめた
面会謝絶その4文字が重くのしかかる
躊躇っていると声がかけられた
「あなた朝の」
「あっはいまあ」
「母さん」
私の後から来ていた燈真が驚いた声をあげる
「燈真」
「驚いたな兄貴にきいたら黙りだって言ってたのに来たんだ」
母親だし来るに決まってんじゃん
なに言ってるの?
「ごめんなさい」
「俺のことは愛してくれなかった癖に
まっいいや病院だしもめたくないし
陽菜、行くよ」
強引に手首を掴まれぐいぐいと引っ張っていく
病院から外に出るとタクシーを停めて目的地を告げた
「ちょっと」
「ちょっと一緒にいて」
「···はい」
着いた場所は駅前のファミレスだった
ちょうどお腹もすいていたしなにより店内の雑踏が沈黙を破ってくれそうで落ちつく
窓際の席で伸びをしていると燈真が飲み物をとってきてくれた
「ありがと」
メロンソーダを受け取ると燈真はアイスコーヒーに口をつけながらタバコのフィルムを開けていた
「なに?」
「いくつなのかなって」
「俺をガキ呼ばわりする気?」
「いやだって」
「タバコも酒も普通だし女だって抱くけど?
そんなことするのに許可がいる?」
燈真はアメリカ暮らしをしてるからきっと価値観が違うんだ
「年をきいただけなのに」
「陽菜がもし誰かとする時、いちいち許可をとる?」
「うっ···」
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