tear/skill
「直接きいたら?
つーか行くよ」
これ以上どこに行くというのか
お会計は燈真がしてくれてタクシー代もだしてくれたけど着いたのは普通のホテル
「俺が宿泊してるホテル」
最上階つまりはスイートルームになるんだけどそこをおさえれるってどんだけ金持ちなわけ
「すごっ」
窓から見える夜景に私は驚嘆した
まるで世界がすべて手に入ったかのようだった
「そう?ぜんぜん普通じゃん」
「···燈真?」
後ろから抱きしめられてどきりとした
「こんなちっぽけな夜景なんかより陽菜の方が綺麗だよ」
私はなんにも言えなかった
「···燈真」
「な~んていちど言ってみたかったんだよね」
「もう」
「先にシャワー浴びてきなよ」
「うっうん···なにもしないよね」
「期待してる?」
悠真にそっくりな目で言われると弱い
「してないしてない」
シャワールームも豪華な作りで私は満足するまでお湯に浸かっていた
部屋に戻ると燈真はもう眠っていた
期待してる?···してないよ
ウソばかりな私
ヒステリックなんて···
そうかもしれないけど実際そう言われんの傷つくなイヤだな
燈真の眠っているベッドに音もなくあがって私は馬乗りになった
燈真の首に手をそっとかける
なんで?私はこういう衝動にかられるのかな
小さい頃からそうだった
満たされなかったりすると壊したくなる
自分の思うとおりにいかないなら壊してしまえ
「怖い女」
えっ···
目を開けた燈真と目が合う
「あっごめん今おりるから」
手をぱっと後ろ手に隠す
「殺そうとしたの?
それとも壊そうとしたの?」
私はぶんぶんと首を振った
燈真の目まるで獲物を狩る肉食獣のそれだ
「してないなにも」
本当は壊したかったなんて口が裂けても言えない
「なるほどね
つーかこのまま真下からおまえを見続けるのも悪くないんだけど少し呑もうか」
はい?
「私、お酒あんまり強くないし」
「別に」
燈真は私を押しのけてバスルームに行ってしまった
鏡を見て絶句する
紫色の痣が首についていた
「あ~あ痕残っちまうなこれ」
燈真がしばらくして帰ってくるなりすぐに部屋を出て移動した
同じホテル内にある星のラウンジ
落ちついた感じのBrだった
「燈真さま本日は良質のワインが入荷しましたよ」
燈真は軽く頷いて窓際の夜景がよく見える席に着きタバコに火をつけながら首をさする
よく見れば痣がある
「ごめんなさい」
「なにが?」
「首···」
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