tear/skill
「キスマークつける奴はいるけどおまえみたく首絞め痣つける奴は稀だよな
つーかそういうのが趣味なわけ?」
「ちょっと燈真」
店員さんがワインを注ぎながら怪訝な顔をしてる
これじゃあまるで私が変質者みたいじゃない
注がれたのは血のような赤ワイン
「乾杯」
ワイングラスを音をたてないように乾杯してから燈真は味わいながらも一気に呑んでしまう
燈真は店員さんを呼び日本酒を注文していた
「お酒つよいし」
「別に」
「燈真はどうしてそんなに余裕なの」
「じゃあなんでおまえは余裕ないんだよ」
「余裕なくなんてない」
年下の癖に妙に大人びていてなんかムカつく
だから私は燈真から日本酒の杯を奪って飲み干した
「おまえなぁ」
まだ足りなかった
渇きが癒えない
私は日本酒をあり得ないくらい呑んだんだと思う
燈真が傷つくような言葉をたくさん言ったんだと思う
だって気づいたらベッドの上だったから
隣にいる燈真の顔を見て私はげんなりする
またやっちゃったんだ
燈真の頬···爪で傷つけたような痕
私だきっと
「イタタ···」
「だろうなあんだけ呑んでぶっ壊れて俺を傷つけて満足したか?
挙げ句の果てには俺を襲ってなにがしたいんだよおまえ
高くつくぜ?」
えっ···
燈真は一生懸命うけとめようとしてくれたんだ
背中にある紫色の痣
「ごめんなさい」
水のペットボトルを私に放り投げる
「おかげで体中痛い」
だよね···
「お礼させて」
「今日中に帰らなきゃならいから
それにおまえを待ってるのは俺じゃないだろ」
「わかってる」
燈真が横に座るなりスマホをとりだした
「俺の彼女」
聞きたくなかった
でも現実は残酷で
ブロンドの綺麗な髪の可愛らしい女の人
「これが現実」
「···諦めさせたくてウソついてるんでしょ」
「はあ?」
だよね私なにいってるんだろ
「ごめんなんでもない」
「悠真兄が心配だからたまには連絡する」
「···燈真」
「ん?」
「私がんばるから」
「はいはい」
燈真らしい言い方に安堵した
「本当に帰るんだよねアメリカ」
「さっきも言ったろ」
「わかってるけどやっぱり寂しいな」
「離れてても友達だ」
友達その響きが何だか気に障った
「友達···行きたいならかってに行きなよ」
「本当おまえはヒステリックなんだから」
燈真が立ちあがる
「もう行くんだよね」
「まあな後三時間しかないからな
ここの代金は支払ってあるから勝手に帰って」
「うん」
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