tear/skill
「だからいらないってば」
「あっそ」
「あっごめん」
悠真は波瑠の頬に手を滑らせ指で唇をなぞる
まるで恋人同士がやるようについと自分のほうに向かせると当たり前のようにキスをした
「ごめんね」
「悠真の彼女って
ウソだよねウソ」
まあそりゃあ大学でも1、2を争うくらいの波瑠は美少女だしかわいいよ
でも···そんなのないよ
悠真も言わなかったじゃん
世間はせまいってよく言うけどこんなのないよ
「私、帰るね」
ここは潔く身を引こう
だって波瑠には勝てないし
「なあ」
「なに?」
「奪ってみたら?」
「バカにしないでよ」
「勝てるかもよ案外」
「よまないでよいちいち
そうやって人の心をよんでコケにしてなにが楽しいのよ」
「なんも」
きこえるんだからしかたないだろ
悠真はそう言っていた
「ごめんね」
「波瑠が謝ることないよ、うんたぶん」
諦めが悪いのは私の性格
ヒステリックなのは元から
受けとめてくれたのは璃玖だった
ぜんぶぜんぶ知ってた
突き放したのは悠真
気づかせてくれたの
聞こえてるよね悠真だもん
人の心よめるんだもん
「うるさい」
「悠真」
「おまえうるさすぎ
ぜんぶ後ろ向きな理屈並べて」
「あっ···」
「波瑠とは別れたんだよ半年前に」
「えっ···」
じゃあなんでみせつけるようにキスしたの
私が傷つくの見て楽しかった?
「俺の気持ちわかってないな」
「わからないよ言わないんだもん
わかるわけないよ」
ぽんぽんと頭を撫でられた
甘やかさないでよ
そうやって優しくしないでよ
キライキライ大キライ
私は泣きながら走り出した
「悠真」
「はいはい悪かったよ
おまえまで使って
でもあいつは気づくかな大切な奴のこと」
悠真のいうあいつは璃玖のこと
私は悠真に手を振るなり歩きだした
きっとこのままじゃよくない
だからちゃんと言わなきゃ
ちゃんと伝えなきゃ
璃玖の病室まで来たけどどうしよう
「さあてどうすんのかね」
「悠真」
「よんでやろうか?」
「読めるの?」
ゆっくり頷く悠真
「怖いだろ」
怖くないと言えば嘘になる
悠真はガチャリとドアを開け中に入る
私は当然おいてけぼりで
私はゆっくり目を閉じた
するとあの場面が甦る
璃玖と歩いてた
普通に喋ってたはず
内容まで定かじゃないけど
「なあ陽菜」
「ん?」
「今日も暑いよな」
「だから海いくんじゃん」
あれこんな会話してたんだっけ
「俺おまえと思い出つくれるなんてマジ嬉しい」
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