tear/skill
「えっ···」
「さあて問題です
おまえが好きなのは俺でしょうか璃玖でしょうか」
ベッドに座って笑う悠真は相変わらずの余裕の笑み
「わかんないわよ」
「俺と一夏のアバンチュールをしたくせに?」
「好きって言わせたいの?」
「はあ?こっちが質問してんだよ」
「わかんないの
それが答え」
悠真は珍しく考え込んでいる
「本心みたいだけどよめないからわからない」
「えっ···」
「まっいいや、帰るんだろ」
「うん帰るけど」
「けど?」
「なんでもない」
バタンとドアを閉めて私は歩きだした
「陽菜」
波瑠が手を振りながら言う
「波瑠」
「さっきはごめんね」
「んん大丈夫」
「それより悠真と仲良しだね」
「そうかなぁ遊ばれてるだけのような気がする」
「陽菜さ駅前に新しいケーキ屋さんできたんだよ行ってみない?」
「いくいく」
私はウキウキしながら波瑠と一緒にバスで駅前まで戻った
確かに新しいケーキ屋さんできて人気のようだった
店内は涼しくて鬱陶しい夏の暑さが嘘のようだ
メニューはケーキバイキング形式でワンドリンク制だ
私はアイスティ、波瑠はアイスコーヒーをそれぞれ持ち窓際の席についた
飲み物を置いてケーキのほうにいくと色とりどりの宝石のようなケーキが並んでいた
「うわーどうしよう」
悩みながらシチリア産レモンのレアチーズとカボスを絞って食べるクレームブリュレ
ベルギーチョコのケーキをセレクトした
席に戻ると波瑠もイチゴのショートと柘榴ソースのかかったブラックベリーレアチーズと宇治抹茶のショコラケーキを持ってきた
「そっちもおいしそう」
ケーキを何個か半分づつしながら波瑠が言う
「はい影沼先輩の連絡先
変わってなければつながるから」
私まだきいてなかった連絡先
「ありがとう
ケーキおいしいね」
「うん
あのさ陽菜···怒ってる?
ごめんねでもずっと友達でいたい」
「うん私も」
「でもさ陽菜、ちゃんと1人に決めなきゃダメだからね」
「わかってます
ケーキってお持ち帰りできるかな?」
「できるよ」
私はあんまり甘くない物をチョイスして駅前で波瑠と別れてその足でまた病院に戻った
影沼先輩の病室のドアをノックして開けてみたが部屋にはいないようだった
またウロウロしてるんだ
まるで声から逃げるように
しかたなくロビーのソファーに座っていると声がした
「璃玖くん目が醒めたって」
「えっ」
看護士さんたちの声に私は少し安堵した
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