漆黒の破片
ぱっと顔を上げた隆弘は私を怪訝そうに
見ていた。
「お前が………奈々なのか…。」
「う、うん。隆弘?」
隆弘は苦しそうに顔を歪めて頭を抱えていた。
「た、隆弘っ?大丈夫!?」
「思い出せねぇ。お前のことだけが…。
思い出せねぇっ!頭がズキズキするっ」
隆弘はしゃがみこむと頭を抱えて
私のことを揺れた瞳で見ていた。
「いいよ。無理に思い出そうとしないで
………。私の名前は神咲奈々って
言います!よろしくね!」
精一杯の笑顔で隆弘を見つめた。
この
不安も
寂しさも
悲しさも
全て隆弘にぶつけてあげたい。だけど
それはできない……私の愛した隆弘は
記憶を無くしているんだから