解放の本
南天さんは今まで、病気にかかってなんかいないのに隔離病棟に入れられた人たちを助けようとしていた。

でも、見和さんは幼い子供を親から引き離し、親が悲しんでいるところを見ても人を隔離することをやめなかった。

隔離された人たちは、隔離病棟に入れられた途端、みんな同じ病気にかかって苦しんだ。

「あの病気は菌が原因なんじゃない。心の問題なの」

病気は、ネガティブな感情を持つことで進行していく。太部に来た人が病気で苦しんだのも、人がいなくて薄暗い町を見続けるうちに、憂鬱になって暗いことしか考えられなくなったからだ。

「オレガノはこの病気を治す薬を作れるんだけど、見和さんはこの病気の治療を禁止したの」

この病気は薬を飲んで、つらいことを考えないようにすれば治る。けれど、進行すると足が痛くなって苦しむ。

「なぜ見和さんは治療を禁止したのかな?」

「わからないわ。でも、あんなところにいたら病気が治らない!」

「南天さん、準備OKです!」

奥の方で作られていた何かが完成したらしい。南天さんは、完成した機械を受け取ると私の目を見つめる。

「あの……まさか、それを私に使えと……?」

「うん、お願い」

周りのみんなが私を見る。これは、断れない……

「はい、頑張ります」

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