解放の本
「それじゃ、ちょっと機械を見せてね」

笑莉は線がごちゃごちゃしているところを見つめる。

「ねぇ桃子、説明書とかある?」

「それが……あるんだけど偽物で……」

本物を探している時間はないかもしれない。それでも一応……

「無いかもしれないけど、本物の説明書を探してくれない?」

無くても大体わかるが、確認しておきたいのだ。

「わかった!」

「私も探します」

まさか偽物の説明書を用意するとは思わなかった。でも、もしかしたら見つかるかもね。だって黒髪の女の人が見和さんに聞いてくれてるから。

「本物の説明書の場所を教えろ」

「教えないわ。勝手に探しなよ」

見和さんは、黒髪の女の人と目を合わせないようにして言う。黒髪の女の人は見和さんにもう一度聞く。さっきよりも怖い顔で。

「おっ教えない……」

見和さんは泣きそうな顔になりながらも、本物の説明書がどこにあるのかは教えなかった。

「こことか怪しい……」

「見てみましょうか」

ベッドの下を調べようとすると、おとなしくしていた見和さんが暴れ始めた。

「やめてよ!そこを開けるなああ!」

「まさか、あそこにあるのか!」

暴れ始めた見和さんを押さえつけ、女の人はじっと2人を見ている。ベッドの下には……

「なにこれ、猫耳メイドさんの本……」

それ以外には、男の子2人が表紙の本とか、あざといポーズの女の子の本とか……

「見和さんって幼い男の子も好きなのかな」

「桃子ちゃん、もとの場所に戻しましょう」

見和さんは、もうぐったりとしている。この世の終わりのような顔だ。こんな珍事件が起きて私も忘れていたけど、時間が無くなってきている。説明書は見つかりそうにない。

こうなったら、説明書なしでやるしかない。

覚悟を決めて、工具箱からペンチを取り出した。
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