解放の本
「ただいま~!オレガノさん、南天さん、ちょっと話したいことが……って寝てる!?」

「南天が落ち着かなくて……あまり良くないけれど眠らせたの」

オレガノさんは何か透明な液体の入った注射器を持っていた。それを見て、何をしたのかがわかった。

「太部がこうなったのは、解放の本の影響らしいです」

解放の本や空躁禁書について知っているか聞くと、オレガノさんは名前は聞いたことがあるけれど、実際に見たことはないと答えた。

「これが解放の本です」

オレガノさんに願いの消し方などを説明すると、まずは見和さんの病気を治そうということになった。

「見和ちゃん、久しぶりね」

「……また治療の話ですか」

こんなことになってもまだ病気を治したくないと言う見和さんに、オレガノさんは家族が心配していることを教える。家族が心配していると知って、見和さんは治療するか迷った。笑莉が今の状態だと太部に住んでいる人にも良くないと言うと、見和さんは治療することにした。

「もちろん、皆の治療も禁止しません。ですが、私の治療について不安なことが……」

「どうしたの?」

気になるところで見和さんは黙ってしまった。

「なんで私が消えなくちゃいけないんだよ……」

オレガノさんと笑莉が危ないと感じたようで見和さんから離れる。私も見和さんのさっきまでと雰囲気が違うと思い後ずさりした。

「私がいないとあいつは生きていけないくせに……生きていくためには私が見和として生きるしかないんだ!」

さっきまでの見和さんと何かが違う。見た目は見和さんなのに話し方も表情も別人のようだ。もしかして、見和さんは今何かに乗っ取られている?

ちょうど、南天さんが起きた。

「寝ていた間に何があったのかはわかんないけど、その様子だと反省してないみたいだな」

白衣で今まで見えなかったが、南天さんは刀を持っていたらしい。南天さんが持っている刀を見て、オレガノさんの顔は真っ青になる。

「お前みたいな人の気持ちも考えないやつは、この刀で地獄へ落としてやる!」

見和さんを乗っ取る何かは、南天さんの言葉で怒ったように見えた。でも、その後不気味に笑い、手招きをした。
南天さんは刀を持って見和さんに切りかかろうとする。見和さんを乗っ取る何かはそれをよけようともしず、むしろ返り討ちにしようとしていた。

武器も持っていないのに、どうするつもりなの?
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