解放の本

鬼一族は暗殺者の一族で、平和に見えるこの時代でも暗躍しているの。南天はその一族の中でも特に優秀な暗殺者だったの。

ある日、南天たちはとある一家を暗殺する任務を遂行していたわ。そのとき、私と出会ったの。南天たちは、夫婦を殺して口封じのため、その夫婦の子供と家事を手伝っていた人を殺そうとしていた。南天は、物置に隠れていた２人の子供を発見したところだった。


「残念だったね。お前たちの人生はここで終わりだ」

「あの……あなたは……？」

私が話しかけると、子供たちを刺そうとしていた手を降ろし、私のほうを見た。

「あんた、この家に来ていた医者の……」

「何をしているの！こんな小さな命を奪おうとするなんて……何で……」

「この子供たちに今のところ罪は無い。だが、親が罪人だ。罪人に育てられた子供は罪人と考え方や行動が似る。今のうちに消さないといけない」

この人は、殺すことを悪いと思っていない様だった。

「やめてくれ！子供たちだけは……」

その直後に、女の人の叫び声が聞こえた。早く逃げないといけない！

「もし、親の育て方が悪いのであれば、責任をもって育てられる大人のもとに行くべきだわ。まだこの子たちは間に合う」

「間に合う……」

表情が、さっきと変わっている。この人もきっと間に合う！

「私は責任をもって育てられる人を知っているわ！行きましょう！」

子供たちを助け出そうとしたその時……

「おいお前！何をしている！」

「見つかった！」

どうやって子供と一緒に逃げよう……？姉弟の姉は元気で、走ることなら大人にも負けない。でも、弟は体が弱くて走れない。私たちの全速力にはきっとついていけない……

「この子は私が背負う。だから、私についてきて」

「できるの！？」

本当に子供を背負っていても、私より速かった。南天の後を追いかけているといつの間にか追手はいなくなっていた。

「あとはこの子たちをアディソンさんのところに……」

アディソンさんは事情があって親と一緒にいられない子供を保護している人だ。

「霧矢……」

「どうしたの？」

「いや、何でもない」

南天は泣きそうになっていた。