解放の本
その後アディソンさんのところに行くと、2人とも友達と遊んでいた。そのとき私は、元気そうでよかったと言ったけれども、後悔したことがある。あのとき、私が周りに助けを求めていれば、家族全員助かったかもしれない。私の判断ミスのせいで……
自分は誰の役にも立てない、そう思っていたとき、南天に救われた。

「私、オレガノみたいな医者になりたい」

ある日、南天はそう言った。

「私みたいな……?」

夢かなと思い、髪の毛を一本抜いた。でも、痛かった。

「うん、オレガノが病気やけがで苦しんでいる人を救っているのを見て、私も、誰かの役に立ちたいと思ったんだ……」

こんな私でも、誰かの役に立っている……?

「今まで私は、多くの人を殺してきた。でも、殺された人もその周りの人の、幸せな暮らしを潰していたことに気付いた。だから、オレガノみたいな医者になって病気やけがで苦しむ人たちが、家族と幸せに暮らせるようになりたいと思ったんだ」

南天が、そう思ってくれているなんて……私には、手伝う以外の選択肢はないわ!

「私、南天の夢を応援するわ!」

それから、南天は国家試験に向けて勉強するようになった。南天は、元から記憶力は良かったうえに努力家だったので、勉強は順調に進んでいった。そのほかにも、特に欠点はなかったけど、メスを持つとどうしても深く切ってしまいそうになる癖を直すのに苦労していた。

そして、南天は国家試験に合格した。

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