解放の本
「空操禁書とは何だ?」

紫陽花さんは知らなかったらしい。

「空操禁書は、願いを書くとそれを叶えてくれる本です」

「空操禁書に事故を起こしてほしいと願った奴をさがせばいいのか……?」

私は太部での出来事を思い出した。もしかしたら、別の事を願って事故を起こしたのかもしれない。

「もしかしたら、直接事故を起こしたいと書いたのではないかもしれません。例えば、電車でどこかに行くのを邪魔したいとか……」

紫陽花さんはなるほどと言って、他の人にも意見を聞いている。するとまた、誰かに見られている感じがする。今度は頭も痛くなってきた。やっぱり女の子は私を見ている。何故私を見るのかを聞こうとした途端、頭が痛くなくなって誰かに見られている感じもしなくなる。

「花鳥とかは女子に好かれてるから、女子の誰かが彼女に嫉妬してとかありそうだな」

後ろのほうにいた男の人がそう言った。花鳥さんは、そんなことを考える子はいないと否定した。

「いや……花鳥、心当たりのある人物がいる。みんな、調査を始めるぞ!」

1人1人に指示が出される。私は紫陽花さんと花鳥さんと、そして私を見ていたあの女の子と一緒に調べることになった。

「私は仄矢(ほのや)……よろしく……」

「よろしく……」

私は紫陽花さんから離れないようにしようと思った。何があってもこの子か花鳥さんと2人きりになってはいけない。
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