解放の本
「ここどこ……」

私は作戦を実行して、無事、青から離れることができた。でも……

「おなかすいた。山に登るんじゃなかった……」

一歩を踏み出そうとしたけれど、力が入らない。立つこともできなくなって、そのまま地面に座り込んだ。

「誰か、助けて」

そこで私の意識が途絶えた。

「この子大丈夫?さっきから目を覚まさないけど……」

「大丈夫よ。きっと」

誰かの話し声が聞こえる。もしかして私、家に連れて帰られたのかな?

でもこの声はメイドさんの声ではないし……

「あら、起きたの」

「大丈夫?痛いところはない?」

目を覚ますと、白衣を着た人と金髪の人がいた。

「はい、大丈夫です。あの、あなたたちは……?」

「まだ名前を言ってなかったわね。私は鬼(きさらぎ) 南天」

白衣を着た人が自己紹介をした。

「私はオレガノ・カルバクロール。あなたは?」

そういえば私、まだ名前を言っていなかった。

「私は藤野 ももこです。あの……助けてくださってありがとうございます!」

「どういたしまして。そういえば、なぜあんなところで倒れていたのかしら?」

オレガノさんが、答えにくい質問をした。

家出って答えたら家に帰されるし……

「えっと……私、理由は言えないんですけれど旅に出ていて……」

「そうだったの」

私はオレガノさんの顔を見た。よかった。怪しまれていない。

その一方で南天さんは私から顔を外してどこかを見る。

「あ、もうこんな時間。午後の診療に行かないと。あなた、太部に行くんだったら今のうちにここを出たほうがいいよ」

太部?聞いたことがない場所だ。

でも一応、南天さんの言う通りにしたほうがいいかもしれない。

「私、もうそろそろ……痛っ!」

足を動かそうとしたけど、痛くて動かせない。

「どうしたの?」

「足が痛くて動かせません」

この足では山を下りられない。

笑莉に会うのはもう少し後になるかもしれない。
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