解放の本
あのとき、空間の本は泣いていた。直接ではないけど、私は本を消してしまった。それは、人を殺したことと変わらないんじゃ……

「ごめんなさい、桃子ちゃん。こんなことになるとは思わなくて……」

申し訳なさそうにふわふわと意代子ちゃんがこっちに来る。

「頑張ってここを守ってくださってありがとうございました」

意代子ちゃんはふわふわと上に登っていく。そのときの意代子ちゃんは悲しそうだった。

「ねえ!何か思い残したことがあるの!?」

私は上に登っていく意代子ちゃんに向かって叫ぶ。すると、意代子ちゃんの動きが止まった。

「でも、叶わないもん」

「本当に?」

背の高い、20歳くらいの男の人の幽霊が現れた。

「横白さん……」

意代子ちゃんの顔が急に赤くなる。横白さんが意代子ちゃんの近くに来て言う。

「戦争から帰ってきたら言おうと思っていたけど、言えなかったことがある」

重たくて冷たかった空気が、一気に変わる。

「意代子さん、ずっとあなたのことが好きでした」

意代子ちゃんは泣いているけれども、さっきまでと違い嬉しそうだ。横白さんは、そんな意代子さんに手を差し出す。

「一緒に往きましょう」

「はい!」

みんなが2人を祝福する。知らない間に意代子ちゃんの姿が横白さんと同じ20歳くらいに成長している。そして、いつの間にか花束を持っていた。

「これ、桃子ちゃんにあげる!」

突然のブーケトスで驚いたけど、落とすわけにはいかないので全力でキャッチする。

「よかったね」

意代子ちゃんにはきっと聞こえていないけれど言ってみた。
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