月明かりの下
「今日はね、息子も手伝いにくるから、あとで紹介するよ」

おじいちゃんはそう言うと、私の頭にチョコンと麦わら帽子を乗せた。
私は、その何気ない「懐かしい優しさ」に触れ、バラバラになってしまった「家族」を思い出した。

なんなんだろう、
この逃げ場のないような悲しさは…
寂しさは…。

私は、悲しみを打ち消すかのように、庭の水道の蛇口を全開にし、フォースで庭の木々に八つ当たりするかのように、水を撒き始めた。

一心に…。
一心に…。


「つ、冷たっ!」


声のする方へ顔を向けると、男の人が水を避けるかのように、後ろを向いて立っていた。


「キャッ! すいません。私…」


「い、いいから。水、水止めて」


私は全力で走り、水道の蛇口を閉めた。
ゴメンナサイ、ゴメンナサイと何度も深く頭を下げる私。

「気持ちよかったよ、汗流せてさ」

私は、申し訳なさそうに顔を上げると、

そこに、shin-yaが立っていた。



な、なんで?

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