告白

「………………誰、それ。」








彼が、不思議そうに訊ねてくるけど、誰を指してるのか。




「男の名前、ずっとずっとずっとずっと、繰り返し、悲しそうに、うわ言のように、呟いてた。」





え…


絶句してしまった。





私が、男、の名前を、呟いていたというのか。




「無意識、なんだ。

君にとって、ずいぶんと大切な男なんだ。」




「その、呟いてた名前を教えてください。」




思い当たる、節がなくて。


……いや、あるにはあるが、当たって欲しくない。




「……ゆうや。

ずっとずっと、その男の名前、呟いてた。」






目の前が真っ暗になる。




痛みは既に遠のいた。



だけど、今となれば、例え痛みを感じていても、痛いと思う暇すらないほど。




頭の中は、彼が言った名前……

ゆうや、に埋め尽くされていた。


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