独りの世界に囚われた女性の場合
 バイトは夕方からだけど、それまでの時間は結構あった。
 昨夜からつけっぱなしのテレビからは賑やかな声が聞こえてくる。
 「やめて」
 チャンネルを探したが、見当たらない。
 モニターからは、笑い声、笑顔、楽しそうな会話、何がそんなに楽しいのだろうか、理解できない。
 笑わないでほしい、
 しかし、また笑う、
 まただ、
 あの衝動に駆られ、私はテレビの電源コードをコンセントから乱暴に引き抜く。
 テーブルから何枚か刃を乱暴に掴み取り、指が切れようがお構い無しで、私は自分の手首を切り刻んでいく。

 やめて、やめて、やめて、何で笑ってるのよ。
 笑わないで、わらわないで、ワラワナイデワラワナイデワラワナイデ
 
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