線香花火
『なつこが死んでしまった。大事に育てたけれど、やっぱり難しかった。捕まえなければもっと生きられたかもしれないと悲しくなった。でも、十年後には生まれ変わってかわいい人間の女の子になるかもしれない。その時は、ぼくが守ってあげたい』

『かわいい人間の女の子になるかもしれない』

『その時は、ぼくが守ってあげたい』

十年前、なんでそんなことを思ったんやろ? 自分は……。

『勢見夏子』と名乗った女の子、もしかしたら……?

十年前の『なつこ』が、人間の女の子になって自分の前に現れてくれたんか?

……そして、淡い夢を見させてくれた……。

「なつこ……」

そうつぶやいたとき、夏子ちゃんの声が聞こえた気がした。

『ありがとう』と……。



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